小さくもないが、さして大きな音でもないヴィオロン・チェロ・ダ・スパッラ。意外にリリースが長く、胴の中でなる残響は、まるで口の中で次のうたを待っているかのようだ。
その泣きすぎず、うたい過ぎない音色は、いつか聞いた気のする遠い世界のものではない。乾いた叙情とも違った、誰もが営む生活の傍らに添ってくれるものだ。感情の極みを強要しない音は、かといって決して甘く切なくはない。
どこかユーモラスな斜めにかけたギターのようにも見える(Fenderのストラップがついていた!)持ち方には、理由がありそうな気がする。重力に逆らっている姿勢が、つい幾何学にあぐらをかきそうな音型をいびつにし、舞踏を始めるのだ。安定を失った音は推進力を得て、空間に広がり始める。
ピリオド、と呼ばれるものは、危ういバランスを失いながら、次の一文を始める自由を持つ。
先へ進もう。