坂田明&さかたかたかさ 2013.3.6 尾道西山別館
坂田明ほど懐の深い音楽家はいないだろう。この日のライヴの会場は、旅館の宴会場とおぼしき広間。床にはカーペットが貼られている。客の年齢層も当然高い。おばさん、というより、おば(あ)さん、おじさん、というより、おじ(い)さんという感じだ。こういう音楽を熱心に聴いてきたと思われる客は見渡したところ…、自分くらいか。
そんな客たちを相手に、坂田は、弁舌巧みに見事に自分の世界に引き込む。しかも、やっている音楽は、十分に楽しめるものではあるが、しっかりと坂田明そのものであるのに驚く。フリージャズの古典から、滑稽味のあるオリジナル、ブルース、バラード、はては民謡まで、この人にしかデザインできないコンサートのプログラムであり演奏だった。
もちろん、もっと上手く演奏する人はいようが、どれをやってもこの人ならではの持ち味であり、そこが聴きどころだと言うべきだろう。
バックを固めるミュージシャンは、御大の個性が強すぎるゆえかやや地味な印象を受けたが、堅実なサポートぶりだった。その中で、ベースのかわいしのぶが光っていた。ファンキーでグルーヴ感があるのに泥臭くならないところが、この人の持ち味だろうか。ファズを利かせたソロもカッコよかった。気になってあとで調べてみたら、スーパー・ジャンキー・モンキーのメンバーだったとは! インディー時代の「キャベツ」は大好きな一枚だった。一度はライヴを観たかったバンドだ。ああ、あのベースだったのか!!
(全文・主宰 写真,改行・石原健)