玉島 フジイユタカ 写真展に、昨日伺った。今回は 玉島で 玉島、である。
玉島の町は、どこか浮遊感がある。浮かぶ飛行島ならぬ、小島を縫う平野部ごと、僅かに水の上に乗っているかのような佇まいが、心の暗部に裏返しに映え上がる。
流れ出る海を前に淀む川、そして街並みを支配する池。前回の、モノクロ・フィルムと印画によるトリートメントは、もはやどこにもない。しかしそれは、“僕、馬 I am a HORSE”との訣別ではなく、地続きのような足取りが、この地になだれ込んだようにむしろ感じられる。
とはいえ、藤井豊君のことを 友人ではなく写真家として過不足なく語ることは、僕にとってとても難しい。語れば語るほど、その多くはすでに逃げ水のように、そこにはない仮の姿のように思える。
作品を前に語っている間は、少しわかったような気がしているものの、帰りがけにカメラをカバンから取り出した頃には、大事なことから順に忘れてしまう始末なのだ。
その儚さこそ、信念に満ちあふれ生きていける人たちにとって、目を背けているだけの現実かもしれない。
石原健