笠岡市 めがねと補聴器専門店・ツザキが お店の日常と 小さなまちでの活動などを綴ります

2017-05-07

オルガン独奏によるフーガの技法 バッハ BWV1080


仲谷沙弥香 (オルガン)

仲谷沙弥香オルガン独奏によるバッハ「フーガの技法」

バッハ「フーガの技法」は、作曲者の死後出版されたいわゆる「出版譜」と1980年代になって発見されたいわゆる「自筆譜」とが存在する。演奏会では滅多に取り上げられないが、CDでは百花繚乱と言いたいほどさまざまな「フーガの技法」がある。しかし、そのほとんどが「出版譜」を基本としたものである。「自筆譜」を用いているのは、私の知る限り高橋悠治一人だった(他にもあるのかも知れないが)。仲谷沙弥香にこの演奏会を依頼した時に、どの楽譜を用いるかについては話をしなかったが、彼女が選んだのは「自筆譜」の方だった。その理由を尋ねたところ、「出版譜」における基本テーマを提示する1曲目から、それに付点のリズムを付けた動きを見せる2曲目に移るのは不自然であり、2曲目に反行形を提示した「自筆譜」の方が、自然に受け入れられたという。感じ方考え方はいろいろとあり、何が正当であるかは一様ではないだろうが、よりシンプルなものから複雑なものへと、小さな流れがよりたくましい奔流へと成長していくようで、なるほどとこれは説得力があった。ストップの組み方もよく考えられていた。そしてフランス序曲風の7番で一つの頂点を築いて前半を終えた。序曲で終えるのが正しいのか、と悩んでいたところではあるが、二部構成の演奏会という枠組を考えると、こういう構成も的を得ているように感じた。後半は、より複雑で多様なフーガとカノンが演奏され、どこか瞑想的な印象を受けた。聴き映えのするところを強調したり、スピードや音の大きさつまり力業で押し切ることなく、最後までじっくりと弾き切った。それでいて、彼女の演奏にしばしばあらわれる何ものかが取り憑いたかのような、熱い語り口も随所に聴かせてくれた。
連休最終日の午後、熱心な音楽ファンがおおぜい、バッハを聴きに集まって下さいました。ありがとうございました。教会の仲間、いつも支えて下さる友人たちも、様々にサポートして下さいました。心から感謝します。みなさん、7月にまた会いましょう。

(全文・主宰 写真,改行・石原健)