笠岡市 めがねと補聴器専門店・ツザキが お店の日常と 小さなまちでの活動などを綴ります

2013-01-23

内橋和久


内橋和久

 1990年代後半は、アルタード・ステイツ以外でも、内橋和久の演奏はよく聴いた。

 また、その演奏が、アルタード・ステイツとは、ひと味もふた味も違っているのが不思議だった。二つだけその印象を回顧してみる。

1995年6月頃だったか、ワールドミュージック系のフェスティヴァルが震災の爪痕生々しい神戸ジーベックホールで催された。内橋和久は、おおたか静流(vo)・ハムザ・エル・ディン(vo,タール,ウード)と出演した。というより、おおたか・ハムザの伴奏というべきだった。だが、そのバッキングのセンスの良さには耳を奪われたものだ。アルタード・ステイツでは、力とスピード、反応の鋭さを武器に、ぐいぐいバンドを引っ張っていたが、ここではまったく違っていた。主役二人を充分に立て二人に寄り添いつつも、その音は彼にしか出せない、優しさやユーモアに溢れ、優れて個性的であった。歌や言葉を引き出すセンスは、あまたのギタリストが決して追従できるものではない。

 1999年には、同じくジーベックホールで、内橋自身がプロデュースしていたフェスティヴァル・ビヨンド・イノセンスにおいては、姜泰煥(カン・テーファン=as)と芳垣安弘(ds)とのトリオで出演した。姜泰煥は、どのような相手であっても、自己の音楽を崩さない人だ。急速な変化を得意とする演奏家が多いなかで、姜泰煥のインプロヴィゼーションは、ゆったりとうねるようなグルーヴを身上とする。それと対立したら、姜泰煥の持ち味を殺すことになる。内橋=芳垣は、アルタード・ステイツでの語法を放棄し、ゆったりとした姜泰煥の音の浪に身を任せた。そうして、音楽は少しずつ少しずつ表情を膨らませていったのだ。そして、その音楽の充実感は、おさおさアルタード・ステイツに劣るものではなかった。内橋和久が、いかに懐の深い音楽家であるか、感嘆したものだ。

(全文・主宰 / 改行編集・optsuzaki)


高橋悠治&内橋和久 U9発売記念ツアー

2/3 福山 
会場 ロフト 
広島県福山市延広町3−7 アクセビル2F

 ¥3,500-(1ドリンク付) 

お問合せ      ジャズ大衆舎内 やすみいし