たくさんコンサートを催してきたが、こんなに楽しいものは、記憶にない。聴きにきて下さったお客さんの多くがもう一度聴きたい、と思われたことだろう。
「青木洋也avec武久源造」と題したが、これはこのコンサートの本質を捉えていなかった。すばらしい力量をもった二人が真剣勝負でぶつかり合う、その熱気は目眩がするほどで、青木が歌い武久が伴奏する、という気楽な分担関係は一瞬たりともおこらなかった。
初めから終わりまで聴きどころ満載であったが、あえて、クライマックスを求めるならば、バッハのカンタータ「愛の神は裏切り者」と武久源造の最新作「万葉集からの五つの歌」であったろうか。
前者は、語気を荒げた青木の声に呼応して、武久の指は狂ったように、鍵盤を疾駆した。その激しいやりとりは、バッハの意図を超えていたに違いない。
後者は、モダンなセンスの中にいにしえの風雅をさらりと滑り込ませるような印象。それまでの歌詞が、英語、イタリア語、ドイツ語であったためか、日本語の母音の響きが素直に耳に心地よい。アンコールは、大伴旅人の酒を賞美する歌を一部かえて再演し、気分は打ち上げのアルコールへ…。
古楽シリーズ10回目が終わった。これまで、私たちの活動を支援して下さったお客さん、延広教会のみなさん、スタッフ、そしてミュージシャン、ありがとう。
武久源造から、えっ!と思わずのけぞるようなすごい提案も聞いています。
これからも、当舎をお引き立てのことを!
やっぱりライヴでなくっちゃね。
(全文・主催者 写真,改行・optsuzaki)