武久源造は、最新作のCD「New Perspective on BACH未来系バッハへの道」(ALM ALCD1127)で、全編にわたってジルバーマン・フォルテピアノを弾いている。この楽器を用いてのCDは「バッハmeetsジルバーマン・ピアノ」(ALCD1107)が出ているから、最新作はその続編と言っていいだろう。しかし内容は、前作がソロであったのに対し、今回はコンチェルトであり、ジルバーマン・フォルテピアノの可能性探究の いっそうの深化であり、言うまでもないことであるが、武久源造がこの楽器からいまも創造力を沸き立たせる何かを受け取っているということの証左であろう。
録音によるものなのか、楽器の特性なのか、この録音では、最小編成のアンサンブルとフォルテピアノとの、生々しいダイレクトな音のやりとりが聞こえてくる。さらに、フォルテピアノの内声部の音の動きが生き物のようにうねるのがよくわかる。題名は忘れたが、ソニー・スティット(テナーサックス)とバド・パウエル(ピアノ) らのセッションで、ソロのみならずバッキングに回ったバド・パウエルが、ぐいぐい コンボを引っ張っていく、あの音楽の推進力を思い出した。しかし、チェンバロになれた耳にはある種の違和感を覚えないでもない。それは武久源造自身が解説で語っているところであり、その違和感こそが音楽探究の偉大な源であり、それを「未来系」 と称する所以でもあるように思う。
(全文・主催者 写真,改行・optsuzaki)