笠岡市 めがねと補聴器専門店・ツザキが お店の日常と 小さなまちでの活動などを綴ります

2012-05-06

ゴールトベルク受難曲

怪しいタイトル、こんなモノを知らぬ奴の文は読みたくないと
思われる方は、ここが緊急脱出装置。

今頃、打ち上げで皆さん盛り上がっている頃だろう。
それも今日は遠慮させていただいたので、その時間を活かして
思うままを。

ビロウな話で恐縮だが、昨夕から咳と痰が止まらない。
僕の声もナザールかけっぱなしである。
こんなコンディションで行くコンサートは、正直今まで無い。

今日は、待ち焦がれたゴールトベルク変奏曲/武久源造、その日である。
でも、みんなに迷惑かけずに最後まで聴けるかな...。

そんなことは個人的な体調の話でしょ、と思った皆さんは
これまたここまででパラシュートで無事着水。

聴き手も、きっと奏者も、今日は荒れ模様であった。
日が差しながら、雷がなるような今朝からの天気のように。


意気揚々と飛び立とうとした船は、第1変奏からいきなり磁気嵐に
見舞われる。果たして船はどうなる?

表情ひとつ変えず船長は、船を放棄しない。

変容していくチェンバロと奏者のやりとりは、実に激しいものがあった。
安定を最優先すれば、聴く方だって楽だと思われるかもしれない。
そうしないのは、きっと譲れないものがあるからで、それは単に弾手の
「音色の楽しみ」と片付けられないものに違いない。

一曲中で音色を切り替えることで、音色間のバランスも一変するだろう。
でもピアノではなく、チェンバロだからこそできる試みがそこにある。

ナザールの音色は、僕にはなぜか60年代のロックギターや、エレキ・シタールを
想起させる。今はない遠い時代、それとも地球外との交信をしているような
感覚がある。無線音のようなナローバンドな音がそうさせるのか。

そして、第29変奏では、今日も光速を超える。
遠い空間から帰還した第30変奏、永劫回帰のアリア。

変奏は30のヴァリエイションだが、そこに起こる偶然を掛け合わせると
それは文字通り無量大数、である。

すべてが終わり始めてにっこり語る、が、どうだ、というのではない。
今日のところはこんな感じかな、といったところで飄々としている源造さん。

そう、旅はまたここから始まる。