怪しいタイトル、こんなモノを知らぬ奴の文は読みたくないと
思われる方は、ここが緊急脱出装置。
今頃、打ち上げで皆さん盛り上がっている頃だろう。
それも今日は遠慮させていただいたので、その時間を活かして
思うままを。
ビロウな話で恐縮だが、昨夕から咳と痰が止まらない。
僕の声もナザールかけっぱなしである。
こんなコンディションで行くコンサートは、正直今まで無い。
今日は、待ち焦がれたゴールトベルク変奏曲/武久源造、その日である。
でも、みんなに迷惑かけずに最後まで聴けるかな...。
そんなことは個人的な体調の話でしょ、と思った皆さんは
これまたここまででパラシュートで無事着水。
聴き手も、きっと奏者も、今日は荒れ模様であった。
日が差しながら、雷がなるような今朝からの天気のように。
意気揚々と飛び立とうとした船は、第1変奏からいきなり磁気嵐に
見舞われる。果たして船はどうなる?
表情ひとつ変えず船長は、船を放棄しない。
変容していくチェンバロと奏者のやりとりは、実に激しいものがあった。
安定を最優先すれば、聴く方だって楽だと思われるかもしれない。
そうしないのは、きっと譲れないものがあるからで、それは単に弾手の
「音色の楽しみ」と片付けられないものに違いない。
一曲中で音色を切り替えることで、音色間のバランスも一変するだろう。
でもピアノではなく、チェンバロだからこそできる試みがそこにある。
ナザールの音色は、僕にはなぜか60年代のロックギターや、エレキ・シタールを
想起させる。今はない遠い時代、それとも地球外との交信をしているような
感覚がある。無線音のようなナローバンドな音がそうさせるのか。
そして、第29変奏では、今日も光速を超える。
遠い空間から帰還した第30変奏、永劫回帰のアリア。
変奏は30のヴァリエイションだが、そこに起こる偶然を掛け合わせると
それは文字通り無量大数、である。
すべてが終わり始めてにっこり語る、が、どうだ、というのではない。
今日のところはこんな感じかな、といったところで飄々としている源造さん。
そう、旅はまたここから始まる。