その夢の舞台は京都三条木屋町界隈。若い頃勤めていた中古レコード店のあったあたりだ。
景色は一変していて、平屋建ての旧い建物に昔の店のままの重いガラス戸がついている。戸を開けるとパラパラとレコードと、いびつに長いCP-70エレクトリック・グランドが置いてある。ハノンのような練習曲を弾こうとする。
社長と店を出ながら、交番の裏を歩き、時折二眼レフのレンズシャッターを切る。そしてついたのは、人気のない実験室のような続く回廊。ここで最近まで“F-701”を作っていたというのだ。こんな陰鬱なところでカメラが作られるというのは、きっと嘘だと思った。
湿った重苦しいコンクリートの建物から出たいと、腕を伸ばした時、夢は終わった。すっぽり雨は降る。滴一滴と天井裏を打つ雨音を耳は聞いていたのだろう。