笠岡市 めがねと補聴器専門店・ツザキが お店の日常と 小さなまちでの活動などを綴ります
2016-11-27
疎開生活絵巻 お話会 @古民家文庫 茂登田
真摯な活動家・まなべ陽子さんから、お声を掛けていただいた「疎開生活絵巻 お話会」。朝方、開催される里庄町の、古民家文庫 茂登田へ伺った。
悲壮と悲惨の間に
仕事柄、あるご年代以上の方のお話を伺うことは多いのだが、折に積極的に語られる戦争体験は、時に栄光と奇跡のスペクタクルに姿を変えていることがある。そんな人たちは遠い苦しみや大きな歴史の醜さを忘れ、自らを少しでも美化し、更には小さな栄誉の中に生きたいと願うものなのかもしれない。
そうした異常な事態での日常生活は、意外なほどに語られることが少ない。「病気は重い・軽いではない」という言葉に似て、体験の重さはその悲惨さを競うものではないはずだ。石田米子先生の疎開生活の記録は、自らのわだかまりにも焚書されることなく、かといってあてどのないまま雑物のなかで保管され続け、戦後70年にその日だまりのような鮮やかな姿を表わすことになる。
戦中そして戦争直後の混乱の中、子供たちは遊びながら日常を見つめて生きていた。何と大人たちに聞かされても、素朴な疑問を抱いて過ごしたこともあるだろう。そんな子供の価値観を支えたのはやはり身近な家族であり、大きな目で時代を見つめた教師に恵まれた幸運もあるかと感じた。
先生の生年や家族構成の類似を伺うに、元気と精気が残っていれば母も同行できれば、どんなに良かっただろうと思いつつも、(本義のままの)アンソロジーへの肉付けとして、これからを生きる若い方が関心を持ち数多く集ったことに、本会の意義はあった。
折しも名作の呼び声が高い“この世界の片隅に”が公開されたのと全く同じ位相で、実際にその時代を生きた先生をお招きした会が開催されたことは、偶然の一致ではない。