雪混じりの空を見て、ふと、追想します。
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福山駅に迎えに出ると、機材を含む重い荷物を山ほど持った内橋さんと、身軽な上にもなお一層手ぶらな悠治さんでしたが、会場入りしてからのセッティングや音出しの間も、ひたひたと、スリルがありました。裏方としては、アンプとの相性や、ピアノのコンディションについて少し身構えていたのですが、悠治さんは「じゃ、今日はこれで」という感覚なのか、不満をぶつけたりはされませんでした。
ギターに用意していったRoland GA-212は設計思想やエージング不足もあってか量感が出ず、Roland CUBE100(key用) を天井に向けて寝かせる、という変則セッティングを敢行。
内橋さんのその手際に、「やりたいことをいかに限られた中でやるか」を考えて行動する大事さを見たような気がします。
ライブで見聞きしたことの情報量が多すぎて、当日販売していたCDを聴いたのは、つい先日、自宅のアンプを接続しなおしした時のチェックがはじめてでした。
こうした抽象度が高い音楽は、人の手やカラダの動きが視覚的に捉えられることで理解、あるいは安堵があるものなのでしょうか。そんな音の変化の背後の人の息遣いが、どこからか忍び込んできました。
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演奏中、テーブルの上のコップの水が波打ちはじめて、ヤバイなと思った瞬間、横にいた僕に、パッと内橋さんがコップを手渡してきました。とっさに受け取れて、ヤレヤレ。そうして、いっぱい思い出すことはあるのですが、お二人にきっと苦笑されるでしょうから、今日は、このあたりで...。